羽根幸浩のS耐日記 第2回 FIA GT選手権 第2戦 ブルノ(チェコ) 雪と雨で思うように走れず
2001年05月29日
レース直前にシートが確定して、急遽参戦した第1戦を8位で終了した羽根選手。第2戦は準備万端でレースに臨んだはずだったが……。
第2戦はBrno(ブルノ)です。ブルノのあるチェコに向けて、日本を4月13日に出発。14日練習走行。予選は15日で、決勝は16日。あまり知られていませんが、チェコのブルノは戦前からのレースの歴史がある町です。僕は成田からパリ経由でウイーン(Vinnea)に入り、そこからレンタカーで国境を越えて、ブルノに向かいます。昨年は、ちょうど名古屋が水害でとんでもないことになっていて、行くことができませんでした。と、いうわけで、今年が始めてのコースです。
午後9時ごろウイーンに着いて、そこから車で向かうわけですが、なんと雪が降っているではありませんか! レンタカーにはスタッドレスタイヤが付いてはいますが、約3時間の道のり(らしい)を雪の中向かうのは、少々心細い……。萎える気持ちを奮い立たせて、いざ出発。
旧東ヨーロッパの国境には、まだ税関があります。そこで冷たい顔した税関員が、「どこへ行く」「何をしに行くんだ」って、しつこく聞くわけです。「ブルノへレースしに行く!」っていうのが本当のところなんだけど、正直に言うといろいろうるさいんで、「観光です」って言ってます。夜中に通ってるんだから「観光」なわきゃないわなァ、と自分で思いつつ……。
とそうこうしつつ、何とか町に着いて今度は予約してあるホテルの場所を電話で捜すわけです。しかし、町は暗いし、店でホテルを聞こうにも見るからにヤバそうなところしか開いていない……。結局1時間ぐらい迷ったあげく、タクシーのウンちゃんにお金払って先導してもらって、やっとの思いでホテルへ到着です。夜中の2時でした。
ところが、そんな時間でも、まだフライジンガーのメカニックたちはホテルのバーで大騒ぎしていました。明日からのレースは、こんなんで大丈夫か!?
ともかく、ホテルにはカジノもあって、クンクン悪そうな匂いがする。夜中の2時だというのにオネーチャンは多いし! とりあえず、メカニックに「この町のシステム」を尋ねてみると、僕の感はずばり的中! 内容はご想像にお任せしますが、とにかく「ホットシティ!」だったわけです。ちなみに外の気温はマイナス4℃でしたが……。
と、つい前置きがかなり長くなりましたが、レースです。
FIA GTのマシンはフルオリジナル状態のものが多い。羽根選手が駆る#58もほとんどノーマルGT3R。ちなみに、GT3Rが戦うN-GTクラスは、1~2台のフェラーリ360モデナを除いてあとは全てGT3Rで占められている。いわばGT3Rのワンメイクレースのような様相なのだ |
今回は月曜が決勝なので、土曜の午前10時のブリーフィングからレースウイークはスタートします。
予選の天気は、路面こそ完全なウェットではありませんが、雪がチラつく極寒の中行われました。予選がスタートしてコースに飛び出したものの、今年から使うヨコハマタイヤがぜんぜんグリップしない。よくよく聞いたら、路面温度10度以下の設定がないタイヤだという。……。気温マイナス2度では、もはや「ゴム」じゃなくなってる!
最低最悪の展開。予選は、とりあえずコースにいるのが精一杯の状況でした。ほかのタイヤメーカーを装着したマシンは、何とか走っているみたいですが……。クソ。
決勝は朝から雨。これがまた最悪! 朝のウォームアップを走って、オルテリ(編集部注:98年の911GT1でル・マンを総合優勝したポルシェワークスドライバー。フライジンガーのチームメイト)なんかは、「やめて帰ろ!」って言い出す始末。みんな「走りたくないィ!」「ストでも起こそうか」って言い合っていました。
そんな調子だから、決勝は言わずと知れた結果。あまり触れたくないんで……早送りします(編集部注:決勝16台中14位)。
夜の町探索は、どこの国に行っても楽しみの一つです。ここでも出かけました。バーに入るときにはボディチェックされる。なにしろ、この辺はあんまり治安がよくないらしいのです。
帰りはチェコ側の税関を抜けると、免税店があります。お金を持って帰っても両替ができないので、そこでタバコを3カートン買うことにしました。すると、ウイーン側の税関で「そこでなんか買ったか?」って聞かれるわけです。買ったものを見せると、「タバコは1カートンまで免税だから、2カートン分税金払え」って!
やられたァ!
「お金(ウイーンの通貨)がないから2個返す」と言うと、「そこに両替所がある」と指差される!
こうして仕方なく両替して払わされる羽目になるわけです。うまくできてますねェ! なにせ横では、シートを外して車の中を隈なく調べられているヤツがいるし……。こりゃ早く立ち去った方が無難だ。そそくさと退散。
日本っていいとこだなァと、しみじみ思いましたね。こんなことで感心していても、しょうがないんだけど……。 ああ、それにしても、マシン速くなんないかなァ!
ドライバーは、オルテリをはじめかなりレベル高いんですけど……。今回は何とも情けない結果でした。この先も思いやられる!
Yさーん、なんとかしてよォ!
※羽根選手がドライバーズシートに乗り込んでいる写真は、全日本GT選手権FISCOのときのものです