羽根幸浩のS耐日記第9回 徒然なるままに書いてみました
2001年11月02日
世界制覇を企む羽根選手。世界制覇といってもショッカーとかの類ではなく、ポルシェを駆ってのGTレースの話ですけど。果たして来シーズン、羽根選手はアメリカン・ル・マンシリーズ参戦なるか。答えは神、いや世界情勢のみぞ知る!?
空爆は始まっちゃったし、日本も景気が悪く、ポルシェを取り巻く環境も厳しくなっているのかなァ? そんな中、来年はアメリカン・ル・マンシリーズ(編集部注:アメリカでもっとも有名なGTレース。今シーズンは911GT1も走っていた)をやりたいなァなんて思っている僕には、とても追い風と言える状況ではありません。それどころか、お前こんなときにナニ考えてるんだって言われそうなぐらい、そうとう向かい風にあります。
僕はこれまでいつも周りの状況とは無関係に、やりたいことをやりたい放題やってきたわけですが(周りの状況を見ながらレースしていれば、もっと出世していたかもと思ったりもする……)、今回ばかりは僕の年齢のせいもあって世間(世界情勢?)の向かい風に押し戻されそう。しかし世界制覇の野望は、そう簡単にはあきらめられないし。(またまた編集部注:羽根選手がポルシェで参戦したGTレースは、日本のGT選手権、十勝24、プチ・ル・マン、 Pokka1000km、FIA GT選手権、ル・マン24、ニュルブルクリンク24、デイトナ24。つまり、アメリカン・ル・マンシリーズに参戦できれば、世界制覇を達成したことになるわけなんですね)
レースを通じて、人生やら人との関係なんてやらを考えるようになったのは、ポルシェに乗るようになってからだと思います。これが、ほかのマシンやフォーミュラーだったらまた話は違ったはず。それがポルシェに乗っていて一番素晴らしいと思えることじゃないかな。
ポルシェを取り巻く人々は、どこの国に行っても仲間意識があるし、その中でライバルでもある。日本でも、本誌をはじめ専門誌が何冊かできちゃうぐらい取り巻く人々が多い。どれくらい多いかというと、どこの国のレースに行ってもレース自体に影響力を持つぐらい。
そんなポルシェという影響力のある世界でレースをすることは、普段の生活では考えられない出会いや経験があるわけです。この点が、僕がもっともポルシェのレースを優先して取り組みたいと考える理由なわけです。けっして、ポルシェレースで一旗あげよう! とか、一獲千金狙っちゃえ! なんて思っているわけでも何でもありません。ま、そうなればそれにこしたことはないんだけど……。
なにより、レースは日本でもできるし、その方が日本ではメディアに取り上げられるから目立って仕事になるかもしれない。結果を残すだけなら、日本でやるほうがそんなに難しいことではないと思うし。これまで、F3時代もGr-A時代もそうやって結果を出してきたわけだしね。
ところが、世界は広いってことを知ってしまうと、日本だけにいるのが物足りなくなってしまうのは気のせいか? 人からどう評価されるだろうとか、みんなに僕はどのように写っているんだろう、なんてことはすごくチッポケなことに思えてくる。
僕がレースで活躍することで喜んでくれる人の数とか、自分を奮い立たせるレースの雰囲気とか、自分の中から湧き上がってくるなにかとか。ポルシェで走るということに限定すると、どうしても世界で走りたくなってしまう僕なのです。