羽根幸浩のS耐日記通算35回 長い長～い十勝24時間。チーム・アドバンは3位表彰台をゲット
2003年09月22日
03/7/19～7/20 スーパー耐久第5戦 十勝インターナショナルスピードウェイ
スタートのトラブルが響いたことと、思いも寄らない事態になかなかトップに追いつけないチーム・アドバン。ただ今、レース開始から16時間経ちました。
最初のスティントを終えたところで順位は5位。トップとの差は40秒。ピットスタートと他のクラスの集団を交すのにロスした時間です。ペース的にはトップを走るマシンと同じぐらいですが、どこかでタイム差を取り返さないと追いつかないわけで……。その機会をうかがいながら、様子を見ます。
3 時間を過ぎたあたりで順位は4位。トップとの差は、詰まりそうでなかなか詰まりません。ほとんどどこのチームも何の動きもなく、時間が過ぎていきます。想像していたよりトップを走る109号車（ランドリーOGBアドバンGT3）のタイムは速く、ペースを落とす様子がありません。その1台を除き、タイムは2 位から4位までほぼ同じペース。ということは、差がつまらないということでして。夜になって気温が下がった頃に、少しプッシュして差を詰めようと思っていました。この時点では……。ところが、はじめにトラブルがやってきたのは我がチームでした……。
タイヤ交換のときブレーキなどをチェックしているわけですが、なんと！ 5時間半を過ぎた時点でフロントブレーキパッドがない!! 予想外の磨耗の早さに、6時間を過ぎた頃、最初のブレーキ交換をするハメになってしまったのです。予定では12時間はもって、1回交換で24時間行くはずだったのに。なんでだろ～？
余談ですが、実際にはパッドだけを交換するのではなく、ローター、キャリパー、パッドをアッセンブリーで交換できるようになっています。高温になったキャリパーのピストンを戻して、新品パッドを交換するのは思いのほか大変で、時間的にもアッセンブリー交換のほうが早く、効果も大きいんですね。
このブレーキ交換に要した時間は約4分。2周強の遅れを取ってしまいました。なんで？ なんで？ あと2回も替えるの……？ 他のチームも、１回交換でシミュレーションをしているはずで、あと、２回も変えたんじゃ勝負にならないでしょう。
原因はパッドにありそう。他のチームも、同じパッドを使っているところは、同じ事が起こる可能性があるわけです。結果を先に言ってしまうと、他はほぼ12 時間もっちゃった！ 99号車（CRTピレリ・ポルシェ）だけが、パッド交換の時期を誤り、約12時間の時点でコースアウト。ピットに戻れず、避難路でブレーキ交換を行って遅れてしまいました。このロスは、僕たちより大きい。
さて、プッシュ開始の夜間走行に僕の出番が回ってきました。が、またまたハプニング！
全然前が見えないんだけど！
無線で「ライトちゃんと点いてる？」と確認。「左が点いていません……」とピット。
なるほどね。左が全然見えないわけだ。「前が見えないよ～」と無線で交信。ピット「……（無言）」。
夜間走行開始早々、左のヘッドライトが切れた！ ホントかよォ！
どうやら、タイヤハウスの中を通っているライトの配線が、タイヤカスが当たって切れてしまったようです。
少し間を開けて、「フォグライトは点いてます」とピット。だけど、……あんまり役に立ってない。
それに加えて、フロントガラス一面にオイルが付いていて、抜いた車のヘッドライトが後ろから乱反射して前が見にくい。当然コース上の車は全部ハイビーム。「ガラス、ちゃんと拭いてくれよなー！」と無線で文句！ 「ウォッシャー使ってください……」とピット。ウォッシャー出るんだ、と感心したのもつかの間！ ワイパーだけ動いてウォッシャーが出ない。ドリフの大爆笑じゃないんだからさ……。フロントガラスは牛乳瓶の底状態、最悪！ 景色が歪んで見える。これも、配線がタイヤカスで切れたらしい。文句を言いながら、フラフラの酔払い運転を数周続けていると、ペースカーが入ったんで、ためらうことなくピットイン！ フロントガラスを拭いて、給油とタイヤ交換を済ませ再びコースイン。
ペースを26秒台（編集部注：1分26秒台。ちなみに、十勝24時間のベストラップは1分25秒308の飯田章選手。26秒台は、けっこうハイペースなことが分かる）に上げて、追走を試みます。ペース的少しずつ差は詰まっていきますが、思いのほかロスした時間が大きく、我慢の時間帯が続きます。唯一の希望は、僕たちの25号車がどの1クラスの車より燃費が良いようだということ。最終的には、1回給油ストップが少なくて済みそうな感じです。
24 時間レースは、ラップトップのコンピューターに、争っているチームすべてのラップタイム、周回、ストップの時間が入力され、差が計算されています。その結果、僕たちの車は1周半ほど他のチームより余分に走ることが出来ていることが分かります。なんで？ エンジン回転を抑えて走っているからでしょう。本当は、これがアドバンテージになるはずだったんですが、タイムロスの穴埋めに回っちゃいました。
ちょうど12時間を迎える頃、追わなきゃしょうがない状況に追い込まれてしまいました。3回目の走行を終えた後になると、少々疲れて寝よかなーという気になってきます。しかし、寝ると不思議とすぐ順番が回ってくる。もおなの？ って感じ。起こされてもこんな俺（デヘヘ）なんで、こんなに早い訳がない！ って2、3回は無視しちゃいました（といっても、もちろん起きましたけど）。
夜更かし大好きの僕も、一度寝てしまうといきなり弱い。しかし、寝ずにがんばっているクルーを見るとこっちもがんばんなきゃと、ちょっと思ったりする。織戸選手のタイムをモニターで確認すると、完全に追い上げモード。チームの指示も、ペースあげて行ってくださいって……。まだまだ、経過時間は16時間……。
