羽根幸浩のS耐日記通算19回 ポルシェパレードの「ドライビングクリニック」にて
2002年07月03日
2年に一度のポルシェの祭典「ポルシェパレード」。そのプログラムのひとつ、「ドライビングクリニック」の講師として、羽根選手が参加しました。
今回は、その模様をお伝えするJGTC参戦日記番外編です。
996GT2の「PCCB(ポルシェ・カーボン・コンポジット・ブレーキシステム)」のサーキットインプレも出てきます。
さる6月15、16日鈴鹿サーキットでポルシェパレードが行われました。今回は、僕がドライバーを務めた「ドライビングクリニック」でのお話。
そもそも「ドライビングクリニック」と銘打ってあっても、実際のところは、僕を含めた5名のプロドライバー陣がオーナーさんの車のハンドルを握って同乗走行するもので、鈴鹿サーキットのフルコース3周の間に何かを伝えようというものです。
どのように「ドライビングクリニック」するかは、各ドライバーに任せられていたので、言葉で基本を説明しながら走っているドライバーもいれば、ラインなんかを教えているドライバーもいたらしい。が、僕はもっぱらオーナーさんに、ナビシートでできるだけ楽しんでもらえるよう努めました。遊園地感覚を楽しんでもらうというか。ですから、「ドライビングクリニック」という名前とは裏腹に、少々ドライビング中の言葉が少なかったかもしれません。「ドライビングクリニック」を期待していた方、物足りなかったらごめんなさい。
実際のところ、何台もの違う車に乗り込んですぐある一定のレベル(ナビシートで喜んでもらうレベル)で走り出すには、なかなか集中力がいるのです。ですから、気の利いたことをしゃべるところまで気持ち的余裕がなかったのが、実情だったりします。
しかし、いろいろな車に乗ることができて楽しかったのも事実で、ちょっと車の状態がやばくてドキドキしながら走ったことがあったことも。あまり速いペースで走らなかった車の場合、車の状態が良くないって僕が感じてしまったからでしょう。そういった方は、車体のクリニックを受けることをお勧めしますが……。いや、これは半分冗談。
ポルシェって車は、ティプトロであってもサーキットをある程度攻め込んで走れる車がほとんど。その辺はシッカリしていますね。これが他の車の走行となると、2、3周は様子を見ないととても走れませんし、その2、3周で終わってしまう車も多いと思います。
まあ、こういった機会を利用してどんどんサーキットを走る人が増えて、モータースポーツにも興味を持つ人が増えてくれれば、僕らレーシングドライバーの暮らしももうチョット良くなるかも、ナンテ。
今回一番の目玉は、996GT2の「PCCB(ポルシェ・カーボン・コンポジット・ブレーキシステム)でサーキットを走れたことでしょう。ありがとうございました。これは、僕も初体験で、興味津々で楽しまさせていただきました。
感想は、「素晴らしい」の一言につきます。
とにかく、「レスポンスがよく」「ペダルフィーリングにダイレクト感があり」「しかも、そのダイレクトさが常に一定だから、コントロールしやすい」というのが第一印象でした。
通常のブレーキでは、ペダルを踏み始めてからミューがグッと立ち上がってくるようなパットを使うと、パットが噛む傾向にあり、どうしてもコントロール性が良くない場合が多いものです。ローターとの相性も含めて、「よく効くんだけど難しくなっちゃう」ってのが、これにあたります。その辺のバランスが、 PCCBはすごくいい。
絶対的な制動性能は、スチールと比べてどれぐらい上がっているかは確認できていませんが、たぶん上だと思います。グッドなフィーリングとコントロール性の良さからドライビングにも余裕ができ、そういった意味のアドバンテージはかなりあるはずです。