メイキング
Q&A「ポルシェ911の疑問にお答えします」誌面に溢れた疑問にお答えしましょう

ここでは記事を創ってあったんだけど、どうしても誌面に載り切らず断腸の思いでカットしたQ&Aを、順次掲載します。
答えてくれたのはもちろんこの人、テクニカルライターの山田さんです。

Q 37.ポルシェの突然死について

81年SCに乗っています。睡眠中に以下の不安が広がって、眠れない夜が……。

  1. クラッチワイアー切れ定期メンテナンス? 前兆は? そして 切れたときどうしたらいいの?
  2. フューエルポンプ停止ジーって音がし始めたら・・どのくらいもつの? 夏はたまに・・今はしない
  3. インジェクション Kジェトロの寿命は? 故障の前兆は・・?

エンジン、ミッションが何とか生きてればどうにかなりそうですが……遠乗りに……あぁ!不安


A 37.まず個別の質問に答える。
  1. 911のクラッチワイヤーはオーバークオリティと思えるほど太くて丈夫なワイヤーを使っているので、切れる心配はまずない。メンテナンスも必要ない。それでも切れることもあるが、その場合は走行は無理だし素人の応急処置も無理。プロなら道路上での交換も可能だが、簡単ではないので積車を呼んだほうがいい。
  2. 音がし始めたら即交換。しかし、今していないなら、気にしなくてもいいだろう。
  3. 具体的にこれだけと言える寿命はない。故障の前兆はいろいろ。一般的には始動時のハンチングなどのトラブルが多いが、これはKジェトロ本体の故障ではなく、補機類が原因の場合が多い。

 さて、こうなってくると911のQ&Aというよりカウンセリングや禅問答の域に入ってくるように思えるが、とにかく気持ちを切り替えて欲しい。あなたは夜眠るとき、「自分や家族が明日病気になるかもしれない」と心配するだろうか? もししないなら、911に対してだけこんな心配をするのはおかしいと気づくべきだ。心配してもしなくても壊れるときは壊れるし、壊れたらどうするかは壊れてから考えればいい。


Q 38.ちょろちょろ音がします

993に乗って半年のビギナーです。エンジンが温まってきて、信号で停止したりアイドリング状態になるとどこからかちょろちょろと音がしてきます。ついでに油量計も動きます。私はエンジンオイルが循環し、オイルタンクに戻ってきたときにする音かと勝手に思い込んでいますが、正しいのでしょうか?


A 38

 だいたい正しい。オイルタンクにはいつでもオイルが戻っているのでアイドリング状態だからということはないが、オイルが流れる音であることに違いはない。964や993ではまるで雨どいに水が流れるような音がするのはよくあることだ。ビッグバンパーではこういった音はほとんど聞こえないのが不思議なところだが、エンジン音などがうるさいことと、964、993ではオイルタンクの位置が室内に近いからかもしれない。いずれにしても、正常な状態だ。


Q 39.ポルシェのオイルについて

92年カレラ2(MT)に乗っています(街乗り60%、地元の峠30%、サーキット10%)。オイルの種類について、ポルシェ関係の雑誌等ではよく100%化学合成のオイルで高級品を使用していますが、果たしてマッチングはいかがな物かと疑問をもっています。
 私も色々と試しました(5W-40、10W-40、15W-50等)が、あまり印象はよろしくありませんでした。しかも化学合成油はオイルのにじみ、漏れを誘発するのではないでしょうか? 最近は鉱物油(10W-40)を使用し、まめに交換(約3000km)していますが、なかなか良い感触です。オイルホース等からの漏れ、にじみも止まった感じです(パワステポンプのカムシールからは漏れ続けているようですが……)。
 現在のエンジンをもとに開発された化学合成オイルは空冷エンジンにはマッチしないのではないでしょうか。これが私の疑問です。


A 39

 最新の化学合成オイルは空冷エンジンにマッチしないという話は、いろいろなところで聞く。ポルシェのベテランオーナーをはじめ、ポルシェショップやメカニックからもそのような意見はある。しかし、オイルメーカーの人に話を聞くと、真っ向から否定されてしまうのも事実だ。曰く「化学合成オイルが鉱物油より劣る部分はひとつもない」。空冷エンジンだろうが化学合成だからマッチしないことはありえないのだそうだ。
 ではどちらが正しいのかということになると、なかなか答えは出ない。


Q 40.エアバック警告灯について

マイカー964のエアバック警告灯が点灯してしまい正規ポルシェディーラーに相談したところ以下のコメントを伺いました。エアバックセンサーなどの不良・異常以外で警告灯点灯の原因として……。バッテリーの交換または他の理由で端子をはずすと、回路保護のため端子接続後に警告等が点灯することがある言われました。
 その場合、エアバックが正常に機能しないそうです。ということは何らかの理由で個人がバッテリー端子を外した場合、端子接続後にディーラーなどで持っているDMEアナライザーで消灯処置しない限りエアバック機能に障害が残るということでしょうか? バッテリーを外すたびにディーラーに持って行く訳にも行かないしこれらが真実だとするとなんか危ない気がするのですが……。 私はディーラーに消灯処置をしてもらい、その後バッテリー端子を外していませんが確かに再び点燈することはありません。 私と同じような経験をしている人って結構いるような気がしますがいかがでしょうか?


A 40

 ポルシェの修理ショップにも聞いてみたが、そんな話は聞いたことがないそうだ。筆者自身も、964のバッテリーをはずしたことは何度もあるし、巷ではバッテリーのカットスイッチが販売されていて、それを使っている人も多い。サーキットを走る車両なら、キルスイッチも付いている。もし、質問のようなことが頻繁にあるとしたら、もっと大騒ぎになっているはずだ。おそらく、相当なレアケースなのだろう。


Q 41.ガソリン臭い

2速5千回転くらいでしばらく走っていたところ、室内が急にガソリン臭くなってフロントフードを開けても、それらしい匂いが充満していました。その後室内の匂いはなくなりましたが、原因は何でしょうか。結構ヤバいトラブルでしょうか。所有は86カレラです。


A 41

 この質問だけでは原因を特定できない。フューエルラインの一部が破損してガソリン臭がすることはあるが、一時的だったというところがどうもよくわからない。一般的なガソリンタンク周りのトラブルについては本誌の6号で取り上げているので参照して欲しい。


Q 42.

【悩み1】シフトレバーの操作について、左上が1速でその左隣にリバースが並んでいます。ニュートラルから1速に入れるのにレバーを勢い良く動かすと途中の抵抗を感じることなくリバース位置まで動いてしまいます。最初慣れない頃実際に入れ間違いしたことがあります。レバーを押すとか引くとかしないとリバースに入らないようなフェールセーフ機構をどうして付けないのでしょうか?

【悩み2】標準設定の革巻きステアリングですが、10時10分の位置が内側に盛り上がって太くなっています。素手で強く握ると縫い目が指の内側に当たり痛く感じます。それで10時10分の位置を握らないようにしているのですが、これは何の為に盛り上げているのでしょうか? 滑り止めでしょうか?

【悩み3】歴代のターボモデルはノーマルモデルに比べガソリンタンク容量が大きかったように思うのですが、996ターボは何故ノーマルモデルと同じ64リットルのままなのでしょうか?

【悩み4】リバースギアのギア比が1速より40%近く高く、ターボで低速トルクが細いのでバックする時によくエンストしそうになります。何故リバースのギア比がこんなに高いのでしょうか?


A 42

【悩み1】単に慣れの問題で解決できるからだろう。誤操作の危険が特に大きくないなら、操作方法はシンプルなほうがいい。911では964から、つまり、10年以上前から同様のシフト操作を採用しているが、もし、多くのユーザーからクレームがあれば、とっくに改良しているはずだ。現在も特にフェールセーフ機構が採用されないのは、こういった疑問を感じる人が少ないのだろう。

【悩み2】このステアリング形状は別にポルシェ独特のものではなく、現在ではよくあるものだ。やはり握りやすさを考えた形状だろうとは思うが、とうぜん、好みの問題もあるだろう。

【悩み3】手元の資料を当たってみたが、ターボモデルがNAモデルより大きなガソリンタンクを備えていたということはない。なにかの勘違いではないだろうか。

【悩み4】これも資料を見たところ、996ターボのギア比は1速が3.82、リバースが2.86となっており、リバースが約25%ハイギアードになっている。40%というのは間違いではないかと思う。1速よりリバースのほうがハイギアードなのは911に限らずどのクルマでも同じで、996ターボのギア比もごく普通だろう。