ポルシェバカ一代オレンジ号930カップ帰省編

更新日: 2000年10月30日

　これまでの930カップでは、筑波サーキット裏ストレートでじりじりとライバル達に差を付けられていたオレンジ号ですが、9月30日の最終戦に望んだ新生オレンジ号は、エンジンのオーバーホールも完璧。こうなったら、決勝で３位以内をゲットした上で、７秒台のタイムを叩き出し、来年はスーパーカップへチャレンジだ！　と意気込んでいました。

　930カップ前日。意気揚々とサポートカーの小エスティマにＳタイヤを積んでいた時のこと。Ｓタイヤを持ち上げ、いざカーゴルームに置こうとした瞬間、腰に「ド～ン!!」と鈍い痛みが！　こ、これは!?　よく噂に聞く「ぎっくり腰」というヤツでは!?　イヤな不安が脳裏をよぎります。ま、まさか。それにしても、痛い。痛すぎる。なんなんだこの痛みは!!

　深夜。腰に大いなる不安を抱えたまま筑波へ。

　名古屋から筑波までの移動で、さらに痛みが増します。予選の前に、レース仲間の方たちや、当日イベントに参加されているお医者さんから、痛みを和らげる屈伸方法を教えてもらい入念にストレッチ。いくぶん痛みも和らいだが……。

　そしていよいよコースイン。

　付けているシートがフルバケットタイプとは言え、サーキットを全開走行するのです。強烈なコーナリングをすると、身体が微妙にズレます。ズレるたびに腰に激痛が！　イテテ。

　よくサーキットを走られている方のシートを見ると、サイドサポートがしっかり付いているものを選択し、4点式シートベルトのベルト幅が広いタイプのものをチョイスしています。これは、あらためて言うまでもなく、身体をガッチリホールドするために選ばれているわけですが、今回の「ぎっくり腰疑惑事件」のおかげで、初めてその重要性を感じました。私のはフルバケットシートですが、シートベルトに安っちいのを付けてますので、どうしても身体がズルズルっとくる。

「腰さえズレなければ、痛くないんだけどなァ。いやァ、ボクのは腰がズレまくって、痛くてとても走れる状況じゃないんですよね。ふほほ」と、見苦しい言い訳をパドックで言いつつ決勝スタート。

　結果は、９秒台のタイムで予選６位。決勝は10位で終わりました。……トホホ。

　レース終了後、編集部の関、村越はＰＣＪカップの取材でもてぎに向かい、私ひとりで名古屋まで帰省です。東京の大渋滞を抜け、静岡県に入った頃から雨が降って来ました。

　なにしろ、前日から眠っていません。眠気と腰の激痛に耐えながら、ゆっくりペースで走行です。もう少しで、浜名湖サービスエリア。休憩をしようと思ったその時です。眠気も覚める怪音が！　「ガガガァアアッ！」。オレンジ号のエンジン音や走行音をかき消す音が、床下から鳴り響きました。

　なんだなんだ！　落下物か!?　落下物を引いたのか!?

　私は、あまりにも大きな怪音のため、怖くてフロアパネルの下を見ることができません。怪我の傷口が、コワくて見えないのと同じ心境です。

　数日後、オレンジ号を工場入りさせました。

　数時間後、メカニック氏から電話。「ガッハハハハ。日比野君良かったね、死ななくて。落下物が数センチずれてたり、いつものハイペースだったら死んでいたよォ。ワハハハ」。ワハハハって……。

　一体オレンジ号はどうなっているのか？　あまりの不安に、適当に口実作って仕事をサボリ、工場に恐る恐る見に行きました。そこには、リフトアップされたオレンジ号が。現実とご対面です。

　すると。

　ガソリンタンクとフロアパネルにキズを発見。なーんだこんなもんで済んだのか、とひと安心。そこへ、くだんのメカニック氏が出先から戻ってきました。

「こんなんで済んでよかったねェ」と、メカニック氏のひとこと。ホントホント、と想ったのも束の間、「日比野君、ここ見た？」と、笑顔で右のAアームを指差すのです。「うわ、本当にヤバかった。もう少しズレてたらタイヤに激突、バーストだった」。もう少しでお星様になるところでした。