ポルセキ新聞 お蔵入り原稿に花束を池沢さとし『サーキットの狼』の罪と罰 前編
更新日: 2007年08月30日
この間、パソコンデータの整理をやっておりましたところ、とある原稿が出てきました。実は、今から7年ほど前(2000年頃)に某大手出版社からポルシェ初心者向けの単行本を出す企画があり、依頼を受けてワタシが書いたものです。しかし、その単行本自体がお蔵入りとなってしまったため、ワタシの原稿もあえなくお蔵入り、と。ああ、悲し……。ってことで、陽の目を見ることなく薄暗いパソコンのハードディスクの奥底でイジけていた原稿を紹介して昇天させてあげようという、涙なしには語れないのがこのコーナーです。今から7年ほど前の原稿ですので、現在の状況にそぐわない面がありますが、その辺はご容赦を。また、文中に頻発する「ポルシェ主義者」というのが、たしかこの単行本のキーワードになっていたように記憶しています。なお、文体は単行本用のままになっております。
三○代のポルシェ主義者の全てが共通体験しているもの。それは、一九七七年に日本国中を席巻したスーパーカーブームである。スーパーカーブームとは、ランボルギーニやフェラーリなどのイタリアンスーパーカーとポルシェなどのジャーマンスーパーカーがヒーローに祭り上げられた社会現象をいう。当時の小学生の男の子のほとんどは、このブームの熱気に当てられ、熱病にうなされつつ、スーパーカー消しゴムやスーパーカーカードなどのグッズ類を競い合って収集した。
しかしながら、スーパーカーブームの熱気にやられた子供たちも、ブームが去り、時が過ぎ、大人になるにつれスーパーカーのことは遠い過去のものとして忘れてしまった。結局、ほとんどの子供たちは大人になってもポルシェ主義者にはなれなかったわけだ(ある意味幸せか!?)。そういう彼らですら、ポルシェが街を通れば、「お、ポルシェ」と思わず口に出すことがある。しかし、例えそうであっても、それは昔を懐かしむ気持ちがそうさせるだけであって、ポルシェを手に入れようなどとは夢にも思っていない。ましてや、月々の生活費を削ってまでポルシェを買おうという酔狂は、ひとりもいないといっていい。
ところが、三○代になり立派なポルシェ主義者へと成長した人たちは違う。なんとなれば、彼らは今もあのスーパーカーブームの時の熱気が忘れられない。スーパーカーカードに写っていた、宝石のような形をしたポルシェが好きで仕方がない。今もまだ、スーパーカーブームのあのわくわくする余韻の中で生き続けているのだ。
スーパーカーブームを語るとき、忘れてならないのが、一九七五年から四年半に渡って「週刊少年ジャンプ」に掲載された、池沢さとし著の『サーキットの狼』である。これは、主人公の風吹裕矢がロータス・ヨーロッパやディノ246GTなどを駆り、ライバルの早瀬佐近が歴代ポルシェを乗り継いで速さを競い合うといった内容の自動車漫画だった。とにかくこの漫画、これでもかというくらいあらゆるスーパーカーが登場した。三○代のポルシェ主義者は、子供の頃、早瀬佐近が乗るポルシェの活躍ぶりから、ポルシェというスーパーカーの凄さを学んだ。『サーキットの狼』は、スーパーカー小僧にとっては、教科書よりもはるかに大切なバイブルだったのだ。
この『サーキットの狼』が火付け役となって、日本全国に件のスーパーカーブームを巻き起こした。
三○代のポルシェ主義者に会ったら、こう尋ねてみよう。
「ナチス軍総統は誰?」
彼らは嬉々としてこう答えるはずだ。
「早瀬佐近!」
早瀬佐近はナナサンカレラに乗っていて撃墜マークが云々、などと語り始めたら、彼が真性ポルシェ主義者の証拠である。
このように、三○代のポルシェ主義者に深く刷り込まれている『サーキットの狼』だが、この功罪は大きい。
(後編へ続く)
- ポルシェ主義教育は子供をポルシェ主義者に教育中 後編
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- 嫁との葛藤、家族の罵声 後編
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- 池沢さとし『サーキットの狼』の罪と罰 後編
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