ポルセキ新聞 今日のヒトコト 2012年01月22日:今日のヒトコト
今回の今日のヒトコトは初の長編です。ポルシェの真の凄さを身にしみて感じたもんで。
え、先日富士スピードウェイで行われた7時間耐久レース。ワタシはピット奥にある小部屋に7時間こもりっきりでした。何をしていたかというと、パソコンと参加車両の順位とタイムを示す2台のモニターとニラメッコ。スペックスチームから出走した911DAYSレーシングチームほか、同じスペックスチームの別の2台の戦況もチェックしておりました。片手にはメモ用紙と計算機。パソコンは羽根選手が持ち込んだもので、プロのチームが使うシミュレーションソフトが入っております。そこに、我らが3チームの出走マシンのデータ(ガソリン量、予想走行ラップタイムなど)を入力。何時間後にそれぞれの車両がピットインしなくてはならないのか、また7時間後のゴール時点でガソリン量が足りるのかを予想します。そこから、優勝できるラップタイム、ピットインの回数などを逆算してはじき出すわけです。本番では、できるだけこのシミュレーションに沿ってレースを展開するようにします。
前日に羽根さんと計算してデータを打ち込みシミュレーション。そして、本番! 当日は、突発的なアクシデントなどの戦況に合わせて、パソコンのシミュレーションデータを打ち変え、それに応じて戦術を変えていきます。レース後、プロのレース関係者にその話をすると、「今日そんなことしてたんだ。そりゃスゴイわ」と感心されました。プロレースでは当たり前ですが、アマレースではそんなことしているチームはほとんどないですから。エッヘン。
今回、スペックスチームから出走したSタイヤクラスのポルシェチームが総合2位(クラス優勝)になりました。教科書のようなシミュレーションと同じ展開をし、格上のスリックタイヤクラスをリードして6時間45分ほどまで総合1位を走行! しかし、残り15分で逆転されました。最終ドライバーの出走前、こんな情報が入ってきました。総合2位を走っているスリックタイヤクラスのチームの最終スティントは、プロが乗る997GT3カップで、ファステストラップを更新し続けて追い上げてくる、と。そう言っていたのは、そのチームを指揮していた土屋武選手らしいとも。おそらくそこも、我がチームと同じようなプロ並みのシミュレーションをしていたのでは。そして、ファステストラップを更新するようなラップタイムで走ってもガソリンがもち、かつギリギリ逆転できる出走時間を逆算していたはずです。こちらも、997GT3カップのガソリンタンクの容量次第ではそのハイペースのまま走り続けられ、残り15分ほどで逆転されることは分かっていました。
一方、911DAYSレーシングチームも、序盤のタイヤバーストによりシミュレーションからレース展開が外れました。が、その後の編集部日比野たちドライバーのガンバりと幸運なタイミングでペースカーが入ってくれたことで挽回。レース中盤には、当初のシミュレーション軌道に復帰させることができました。この結果、レース中盤にはそのままうまくいけばクラス優勝できることが見えてきていたわけです。そして、実際にクラス優勝できました!
今回つくづく感じたことは、耐久レースでは一発の速さが一番大切ではないということ(もちろん、ここぞというときに速く走れないとダメだけど)。前もって作り出した優勝できるシミュレーションに沿って、いかに我慢のレース展開できるかが大切となります。そのためには、クルマが壊れないことが第一。第二はドライバーが想定ラップタイムでコンスタントに周回できること。当然それを可能にするために、ドライバーの身体的に負担の少ないクルマであることが求められます。
耐久レースを終えて、956、962C時代のポルシェが圧倒的に強かったのが、深く深く合点がいきました。956、962Cとも速いマシンでしたが、一発の速さがダントツだったわけではありません。壊れず、ドライバーの身体的負担を軽減する作りのよさがあったわけです。そして、ポルシェにはデータを入念に解析し、戦術を組み立て臨機応変に対応できる監督やスタッフ、その作戦を実行できるドライバー陣もいました。そりゃ強いわけです。まぐれで勝ったわけじゃないので、何度でも勝てる! 現在、あのマンタイレーシングが、あれほどニュル24時間で総合優勝できるのもまったく同じことが言えるでしょう。総帥のオラフ・マンタイ氏がニュル24時間でポルシェワークスカーを指揮しているのは、耐久レースでの秀でたデータ解析と戦術がポルシェに大いに認められているからだと思います。
7時間耐久レース、いろいろと気づかせてくれましたデス。